ペントアップ需要の発現に備えて
おそらく今年の流行語大賞にノミネートされるのではないか、と考えている言葉の1つが「ペントアップ需要」です。
「ペントアップ需要」は、「繰越需要」という日本語訳がついていますが、景気後退期に購買行動を控えていた消費者の需要が、一気に回復することを意味する経済用語です。
コロナ禍で一時的に旅行や飲食を我慢している消費者が、その反動で一気に消費されるのでは、と噂されています。
本当にペントアップ需要が発現するのでしょうか。
2020年7月には日銀の黒田総裁が「ペントアップ需要がこれから顕在化していく」と話されていました。すでに発現しているという説もありますし、もうすぐ顕在化すると言われ続けているようにも思います。
日本政策投資銀行2021年3月17日発行のレポートによると、コロナ禍で約30兆円もの貯蓄が増えているようです。
貯蓄が増えた原因のひとつは旅行や外食を我慢したことによるものですが、もうひとつの要因として1人10万円の特別定額給付金をあげています。総額約12兆円の定額給付金のうち、半分以上が貯蓄にまわっていると試算しているようです。
コロナ禍で増えた貯蓄約30兆円が原資となってペントアップ需要が発現するのでは、と想定されています。
過去に遡って、日本でのペントアップ需要の事例をみてみます。内閣府の平成25年度 年次経済財政報告によれば、東日本大震災の後、ペントアップ需要がおき、2011年末から2012年後半にかけて個人消費を一時的に押し上げた、としています。
つまり、ペントアップ需要は、あくまでも買い控えの反動消費なので一時的なものです。
ただし、今回で緊急事態宣言も三回目となるほどコロナ禍が長引く中で、原資は30兆円まで巨大化しています。
お隣の中国では、解放された人々が一気に観光地に殺到する様子が報道されていましたが、同様の光景が日本でも起こる可能性を秘めています。
そこで、今後のペントアップ需要を予測しそれを獲得する方策だけでなく、キャパオーバーで享受しきれなかったということのないよう、いかに分散化、長期化できるか、経営者の皆さんと一緒にあれこれ知恵を絞っているところです。